SIPOC - 課題のある業務プロセスの全体像を俯瞰して本当にやるべきことを明確にする改善ツール
2020-08-11
SIPOC – 課題のある業務プロセスの全体像を俯瞰して本当にやるべきことを明確にする改善ツール
毎日残業して頑張っているのに次から次へと課題が出てきて、トンネルの出口が見えてこない。そんな状況を続けていて疲弊してしまっている。そんな状況になっていませんか?
目の前にある課題を片っ端からつぶしていくといった様なやり方を繰り返していると、頑張れば頑張るほど課題が山積みになってしまいます。
目の前に現れた課題に対して一心不乱に対処しているその姿はあたかもモグラたたきのようです。目の前の課題をなんとか解決したミニ達成感は得られますが、次から次へとモグラのように課題が、頭を出してくるのでいつまでたっても逼迫した状況は改善されません。
モグラ叩き的な悪循環から脱出してトンネルの出口を目指す為には、まず業務プロセスの全体像を俯瞰することから始めるべきです。
なぜなら俯瞰的な視点がないと、常に局所的な課題にばかりに目が行ってしまい、全体像を見失ってしまうからです。
SIPOCは業務プロセスの全体像を捉えるのにシンプルで有効なツールです。
モグラ叩きに夢中になっていると目の前の課題に近視眼的に取り憑かれてしまいます。私は脇目も振らず目の前の課題を解決しているというミニ達成感も得られてしまう為、更にに全体像の俯瞰ができなくなると言う悪循環に陥ってしまうのです。
そこで業務プロセスの全体像を俯瞰する為に有効なのがSIPOCです。
以下の5つの要素を整理することで、業務プロセスの全体像を俯瞰します。
- S:Supplier(供給者)
- I:Input(インプット)
- P:Process(プロセス)
- O:Output(アウトプット)
- C:Customer(顧客)
SIPOC を使って業務プロセスを整理することで視界が広がり、業務プロセスに含まれる重要な要素が可視化される結果、以下の効果をもたらします。
- 顧客との結びつきが確認できる
- 重要な活動から認識できる
- 細かいところで行き詰まるのを避けられる
- 一眼で業務プロセスの全体像を捉えられる
- 本質的な課題の解決を改善計画に結び付けられる
- 詳細な分析の焦点を必要な部分のみに絞れる
- コミュニケーションの土台になる
それでは、SIPOCを活用するための具体的な手順を紹介していきましょう。
5つのステップでSIPOCを作成しよう
手順1.業務プロセスの境界線を明らかにする
SIPOCは全体像をとらえるツールですが、何を見た以下の対象は明確にしなければなりません。
まず自分たちが検討する業務の境界線を明確にしましょう。
自分の仕事の役割や、責任と権限の範囲が「暗黙の了解」的になっていていませんか?
社内外の関係者、上司、顧客と業務範囲について話し合ってみると意外と食い違っていて合意していないケースが多くあります。
例えば、自分には十分な権限が与えられていないのに、上司や依頼主が「うまくやっておいてね」と言って丸投げでやらせようとしているケースなどはないでしょうか?
そういったケースでは、SIPOCを描いた段階でその課題の本質が見えてくることもあります。
業務プロセスの境界を明らかにする上でのポイントは以下の6つです。
- 業務プロセスの「呼び名」を決めて関係者と合意する
- 活動/作業を記述する
- 業務プロセスの全体を含める
- 業務プロセスの開始と終了を明らかにする
- 明確になった業務プロセスの全体をコントロールできるかを確認する
- 課題/問題は明確になった業務プロセスの範囲内にあるかを確認する
手順2.プロセスのアウトプットを明確にする
手順1で定義した業務プロセスから、何が提供されるのかをリストアップしましょう。
製品やサービス、書類、情報、ソースコードなど、何かしらのアウトプットがあるはずです。
ここで注意して欲しいことがあります。まず現状のアウトプットのみをリストアップして下さい。希望的なアウトプットや将来こうしたいと思う的なアウトプットは含めないようにしましょう。
手順3.顧客とその要求(VOC / Voice of Customer)を明確にする
手順2で明らかにしたアウトプットの提供を受け取るのは誰かをリストアップしましょう。
外部顧客だけでなく、内部顧客(経営陣、他部門、上司、チームの他メンバーなど)も漏れなくリストアップすることが重要です。
顧客が明確になったら、業務プロセスの成果物に対して顧客が何を求めているかを再確認します。
アウトプットと顧客を1対1で関連付けて、それぞれのアウトプットが顧客の要求を満たしているかを確認しましょう。
この時点で、顧客の要求を満たしていないアウトプットは見直し、そもそも要求が存在しないアウトプットは無駄なアウトプットとして排除することで生産性に影響するムダを大幅に削減できます。
なお、顧客の要求は具体的かつ定量的に理解しなければいけません。
もし具体的かつ定量的な要求がSIPOC上に明記出来なければ、顧客に対して要求の確認から再スタートするべきです。
顧客の要求を明確にするために、以下のようなことを実施しましょう。
- どのように製品/サービスが使われているかを観察する
- 自分で製品を使ってみる。顧客としてサービスを受けてみる
- 顧客を調査する
- 顧客は何を入手するか?
- 顧客は何をしているか?
- 顧客にインタビューする
なお、顧客へのインタビューを行う際は、「はい」、「いいえ」で答えられる質問(クローズド・クエスチョン)は使わず、より多くの情報が得られる質問(5W1Hで尋ねるオープン・クエスチョン)を使うと効果的です。
現在の要求だけでなく、顧客、市場、現在から将来への機会(チャンス)に目を向けて、将来の要求も探るようにしましょう。
手順4.プロセスへのインプットを明確にする
業務プロセスを開始するには、必ず何らかのインプットが必要です。
業務プロセスのアウトプットを作る上で必要なものをリストアップしておくことで、あとから必要な資源や情報がなくて作業が止まってしまうことを防ぎましょう。
一例として、インプットは以下の6Mを参考にして考えると抜け漏れなく洗い出すことができます。
- Man(人、人材、リソース)
- Material(材料、情報)
- Method(方法、道具)
- Measurement(測定、評価)
- Machine(機械、装置)
- Mother Nature(環境)
手順5.インプットの供給者を明確にする
1つのインプットに対しては、必ず1つ以上の供給者がいます。
手順4で必要なインプットが明確になったら、それはどこから入手しているかを確認します。
次に、供給者に対してどのような要求をすれば最適なインプットを提供してくれるのかもあわせて考えます。
手順3-1で顧客の要求が具体的且つ定量的であるべきであると記しましたが、同様に供給者への要求も具体的且つ定量的である必要があります。
SIPOC図の参考例はこちら
例: SIPOC (設計業務)
例: 不動産会社用ホームページ作成会社
SIPOC とプロセス・マップの連携